MIYAZAKI STORIES

和田 優

逆境が生んだ母の味「ゴボチ」

Masaru Wada

和田 優

株式会社デイリーマーム 代表取締役社長

https://dailymarm.com/

山形県出身。大手外食チェーンや弁当販売のフランチャイズ経営を経て、宮崎県にてデイリーマームを設立。「日々、母の思い、母の味」を理念に、地元の農産物を活かした弁当・惣菜・レストラン事業を展開。2010年の口蹄疫被害をきっかけに、看板商品となる「ゴボチ」を開発。現在は、地域密着型の複合施設「ママンマルシェ」の運営も手掛ける。

「お母さんの味」を届ける挑戦。

Q:「デイリーマーム」という社名にはどのような思いが込められているのでしょうか。

A:「デイリーマーム」は、毎日の生活を意味する「デイリー」と、お母さんを意味する「マーム」を組み合わせた造語です。私が以前勤めていた会社も飲食関係でしたが独立するにあたって、どこか懐かしい「おふくろの味、ばあちゃんの味」を代行するような仕事をしたいと考えました。「日々、母の思い、日々、母の味」という理念が私たちの根幹にあります。当初は弁当とレストラン事業を軸にスタートしました。特に弁当事業では、宮崎県内の多くの私立高校や、宮崎大学医学部付属病院などの学食・売店での販売も手掛け、1日に1,000食以上を作っていました。地元の方々の日常に寄り添い、国産原料にこだわった食事を提供することに誇りを持って取り組んできたのです。

 

未曾有の危機が生んだ看板商品「ゴボチ」誕生の舞台裏

Q:看板商品であるごぼうチップス「ゴボチ」は、どのようにして生まれたのですか。

A:実は「ゴボチ」の誕生には、2010年に宮崎県を襲った口蹄疫(こうていえき)という大きな危機が深く関わっています。当時、弁当事業は順調でしたが口蹄疫の発生により会合やイベント、スポーツ大会がすべて中止になりました。外出も控えられ、売り上げは一気に半減。このままでは立ち行かないという強い危機感を抱きました。
そんな中、以前からお弁当の「お惣菜の一品」として提供していた「ごぼうチップス」に注目しました。当時、お惣菜としての賞味期限はわずか2、3日。これを「お土産」として全国に届けられるように賞味期限を延ばせないかと考えたのです。しかし、私たちには研究員も開発員もいませんでした。そこで藁をもつかむ思いで宮崎県の食品開発センターの門を叩きました。

 

Q:開発には相当な苦労があったのではないでしょうか。

A:食品開発センターの皆さんが「面白そうなテーマだ」と一緒に取り組んでくださり、足掛け1年近くかけて開発を行いました。賞味期限を1年以上に延ばすための研究や、独自の製法の確立など、無我夢中で取り組んだ結果、今のような「ゴボチ」が完成したのです。まさに「ピンチはチャンス」で、口蹄疫という苦難がなければ、今の「ゴボチ」は存在していなかったかもしれません。

大手には真似できない「こだわり」の追求。
オンリーワンを目指すモノづくり

Q:他社の商品と比較して、デイリーマームならではの強みはどこにあるとお考えですか。

A:開発当時、全国にはごぼうチップスを作っている会社が13社ほどありました。私たちは14番目の後発です。そこで徹底的に他社製品を分析しました。その結果、国産原料を使っているのはわずか2社。他は外国産でした。また製法もスライス型か、粉にして成形する型のいずれかでした。

私たちの「ゴボチ」は、まず宮崎県産を中心とした国産原料100%にこだわりました。実は宮崎は全国でも有数のごぼうの産地なんです。そして、お弁当作りで培った「手作り」の感覚を大切にし、他社が敬遠する「斜め10センチのスライス」というリスキーなカットを採用しました。長いスライスは割れやすいため大手はやりたがらないのですが、私たちはあえてそれを強みにしました。

 

Q:味付けや添加物についても独自の基準をお持ちですね。

A:当時、市場にあった全ての製品には添加物が含まれていましたが、私たちは「無添加」で作り上げることにこだわりました。その開発には時間がかかりましたが国産原料、斜め10センチカット、無添加という3つの要素を揃えることで、後発ながら「オンリーワン」の商品になることができたのです。現在、多くの大手メーカーが撤退していく中で、私たちが生き残っているのは、この徹底した差別化があったからだと自負しています。

 

Q:今後の展望についてお聞かせください。

A:食のあり方が変化し、家庭の味や地域の味が消えつつあることに寂しさを感じています。だからこそ、私たちはこれからも「お母さんの味、おばあちゃんの味」を、お弁当や「ゴボチ」を通じて次世代に繋いでいきたい。時代が変わっても、食の大切さは変わりません。自分たちが誇りを持てる仕事を続け、地域の農業や食文化に貢献できる会社であり続けたい。それが私の願いです。

 

<若者へのメッセージ>

熾烈な念願を持ち、好きな道を突き進もう

人生は一度きりです。単なる願望ではなく、何としてでも成し遂げるという「熾烈な念願」を持ってください。そうすれば道は開けます。また、仕事は「好き」になる努力をするか、好きな道を選んでください。好きで取り組むことはストレスにならず、夢中になれます。自分の情熱に正直に、後悔のないよう挑戦し続けてください。

<若者へのメッセージ>