MIYAZAKI STORIES

椎屋 美鈴

「預け先ゼロ」をなくす
”あお” の挑戦

Misuzu Shiiya

椎屋 美鈴

一般社団法人あお 代表

https://www.ao-education.org/

宮崎県出身。高校卒業後、保育士資格を取得する過程で障害者施設での実習を経験し、障害福祉の道を志す。障害児保育に特化した保育士として約30年のキャリアを積み、出産・育児・介護などのブランクを経て、2023年6月に一般社団法人あおを設立。重度の障害や医療的ケアが必要な子どもたちが通える施設を運営し、子どもたちの成長だけでなく、保護者の自己実現や社会参加に尽力している。

「預け先がない」をゼロに。
子どもと働く保護者の双方を支える独自の支援

「預け先がない」をゼロに。
子どもと働く保護者の双方を支える独自の支援

Q:「一般社団法人あお」がどのような活動をされているのか教えてください

A:私たちは主に、障がい児のための「通所施設」の運営と、地域へ出向く「訪問支援」の2つの事業を行っています。通所施設の方は、主に、重度の障がいや日常的に医療的ケアを必要としている子どもたちが過ごしています。「障がいのある子どもたちが利用する保育園」をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
もう一つの訪問支援は、地域の保育園や幼稚園、学校などに通う子どもたちを対象としています。集団の中で遊び・学べるよう先生方と必要な支援を共に考え、アドバイスなどを行っています。現在はこれら2つの軸で毎日稼働しています。

 

Q:他の施設と比較して、特に「あお」ならではの強みはどこにあるのでしょうか。

A: 一番の強みは、利用できる時間の長さです。「お昼過ぎまで」と設定している施設が多い中、私たちはその前後の時間も「延長支援」といった形でお預かりをしています。早い子だと朝9時前には来ますし、夕方は一番遅い送迎車が17時過ぎに出発します。
「時間の長さ」にこだわっている理由が、私の開業の目的が「働くお父さん・お母さんの働くを諦めない」だからです。障がいがあるから預け先がなく、仕事を辞めざるを得ないというお母さんの相談を受けたことがきっかけで、「ないなら作ろう」と決心しました。働く親御さんにとって、安心して預けられる場所であり続けることが私たちの大きな役割だと思っています。

 

「この人たちと一緒に生きていきたい」
という純粋な想い

Q:椎屋さんが保育士、そして障がい児支援の道を志したきっかけは何だったのですか。

A:最初は消去法のような形だったんです。勉強が嫌いで高校卒業後は就職しようと思っていたのですがなかなか決まらなくて。それで保育士の資格が取れる学校へ進みました。そんな中、実習で行った障害者施設で、人生を変えるような衝撃を受けたんです。

そこにいた方たちが、あまりにも純粋でまっすぐで自分の「腹黒さ」が恥ずかしくなるほどでした。「こんなに素敵な人たちがいるんだ。この人たちと一緒に生きていきたい」と心から思ったのが、障害福祉の世界に飛び込んだ原点です。それから大学の先生にも恵まれ、授業の合間に様々な施設や病院でボランティア活動を経験させていただく中で、自分の進むべき道が確信に変わっていきました。

 

Q:そこから30年以上のキャリアを経て、なぜ「経営者」という道を選ばれたのでしょうか。

A:もともと組織に馴染めない性格だという自覚はありました。でも、それ以上に「目の前で困っているお母さんの働きたいという願いを叶えたい」という想いが勝ったんです。

開業の準備期間は1年ほどでしたが、当時は周りに詳しい人がおらず行政の担当者に何度も相談したり自分で必死に調べたりしながら独学で進めました。保育士としての経験はありましたが経営についてはゼロからのスタート。それでも困っている親子に「預かる場所はあるよ」と言ってあげたかった。その一心で走り続け、2023年の6月にようやく形にすることができました。

 

子ども、保護者、そしてスタッフ。
全員が「自己実現」できる場所を目指して

Q:現在、組織として最も大切にしていることは何ですか。

A:私たちが掲げているのは、関わるすべての人の「自己実現」です。まずは子どもたちの成長発達。次にお父さん・お母さんの自己実現。そしてもう一つは一緒に働くスタッフたちの自己実現です。現在は常勤・パート・アルバイトを合わせて10名を超えるスタッフがいます。スタッフ皆にも障がいのある子どもたちと関わる中で「ここで働いてよかった」という生きがいや働く楽しさを感じてほしい。スタッフの心が充実していなければ、子どもたちに良い支援はできないと考えています。

 

Q:現場では、どのような雰囲気で子どもたちと向き合っていらっしゃるのでしょうか。

A:毎日が驚きと発見の連続ですね。私たちは「発達支援」という専門的な領域を担っていますが、それは単なる教育や保育とはまた少し違います。子どもたちが社会の中でどう生きていくか、その土台を作る仕事です。スタッフ同士でも、どうすればもっと子どもたちが自分らしく過ごせるか、保護者が安心して仕事に向き合えるかを常に話し合っています。大変なこともありますが子どもたちの小さな成長や親御さんの笑顔が見られたときは何物にも代えがたい喜びがあります。この「あお」という場所が、みんなにとってのポジティブなエネルギーの源になればいいなと思っています。

 

Q:今後の展望や、目標にしていることがあれば教えてください。

A:最終的な目標は、どんなに重い障がいや病気がある子でも、将来、当たり前に「仕事」を持てる仕組みを作ることです。今はまだ、障がいがある方の就労には多くの壁があり、どこか「慈善活動」のような側面が強いと感じています。この子たちが大人になったとき一人の社会人として当たり前に働き、対価を得られる。それが特別なことではなく「普通」になるような、本当の意味での「仕事」を創り出したい。それが今のわたしの大きな目標です。

一歩踏み出す勇気が、景色を変える

「やりたい」と思ったら、形や結果を気にせずまずは動いてみてください。経験も後ろ盾もない状態から始めた私ですが、真っすぐに、ひたすら前進して行けば必ず誰かが応援してくれます。完璧な計画よりも大切なのは、一歩踏み出す勇気。諦めずに進んでいくと結果は後からついてきます。失敗を恐れず自分を信じて走り出してください。「なんとかなる」の精神で動き出せば、一歩踏み出した人にしか見れない景色を見ることができます。

一歩踏み出す勇気が、景色を変える