MIYAZAKI STORIES

髙橋 弘憲

自ら実践する医療だけを届ける
―信念を貫く正直な医療

Hironori Takahashi

髙橋 弘憲

太陽クリニック 院長

https://nobeoka-taiyouclinic.com/

宮崎西高卒業後、地域医療を志して自治医科大学に進学し1983年に卒業。内科医として、地域医療の精神を継承。「自分がやらないことは患者にもさせない」という考え方のもと、正直な診療と予防指導を推進し、延岡病院内科・自治医科大学血液科をルーツに、近年は栄養指導や著書執筆を牽引。1999年4月開業の太陽クリニックを拠点に、健康・医療全般の情報発信も行う。また地域の一次医療と地域診療の熱心な実践者でもある。

「正直に言う」ことこそが、患者との本当の信頼を創る

「正直に言う」ことこそが、患者との本当の信頼を創る

Q:「自分がやらないことは患者さんにもさせない」とおっしゃっていますが、この言葉に込められた思いを教えてください。

A:どれだけ医療技術が進化しても、最終的に患者さんの健康を守るのは医師の誠実さだという確信があります。患者さんに勧めることは、自分が正しいと信じられるものでなければなりません。内視鏡においても、鎮静剤による事故リスクを考え、原則として眠らせない方針を貫いています。内科医が麻酔をほとんど経験せずに鎮静を行うのは、本当に危ないことなんです。正直に話すことで去っていく患者さんもいますが、そこを妥協することは医師としての誠実さを失うことだと感じています。

 

Q:正直さを大切にするクリニックとして、どのような診療環境を目指されているのでしょうか?

A:単に「すぐ薬を出してくれる」便利なクリニックではありません。それでは患者さんの根本的な健康には繋がらないと思うのです。目指しているのは、患者さんが「なぜ自分の体にこれが起きているのか」を理解して帰っていける診療所です。花粉症ひとつとっても、花粉の量ではなくその人の体の状態が問題なことが多い。食事、睡眠、生活習慣を一緒に見直すことが大切です。月曜から金曜まで夜7時まで診療し、予約不要で来院できる体制も、仕事帰りに気軽に立ち寄れるようにという思いから続けています。1999年の開業から25年以上、正直に話すことで去る患者さんもいれば、その誠実さを求めて来てくれる患者さんもいる。私は「正直医療の実践者」でありたいと思っています。

「信念が生んだ開業」延岡から地域医療への25年

Q:髙橋先生が太陽クリニックを開業されるまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

A:最初から開業しようと考えていたわけではないんです。宮崎西高を卒業後、地域医療を志して自治医科大学に進み、1983年に卒業して宮崎県に戻りました。宮崎県立宮崎病院での経験を経て、延岡病院の内科、県内の僻地診療所と地域医療の最前線を歩んできました。血液内科が医局から撤退してゼロになった際には、自治医科大学の血液科に戻って専門的に学び直すほど、病院医師としての道を歩んでいたのです。ところが政治的な背景が強まり、「医者として正しい診療をしたい」という信念と合わなくなってしまった。そのとき心に湧いたのが「見返してやる」という強い思いでした。1999年に太陽クリニックを開業したのはその怒りと気概が原動力です。あの決断がなければこの25年はなかったかもしれないと思うと、今は本当に良かったと思っています。苦しい時期を乗り越えた経験が診療への情熱に繋がっており、スタッフにもその姿勢が少しずつ伝わっていると感じています。

9冊の著書と栄養指導、教科書を超えた医療への挑戦

Q:健康図書から医療小説、新型コロナ関連まで、著書を9冊執筆されていますね。

A:実は、これが今の診療の大きな柱にもなっているんです。きっかけはサプリメント会社との出会いで、血液を顕微鏡で見ることが栄養状態の把握に繋がると知り、栄養指導と診療が一体になっていきました。講演の依頼が来たり副収入が生まれたりして、気がつけば「普通の開業医がしない仕事」が増えていたのです。電磁波や水についても学び、68歳の今でも夜7時まで働けているのは、その知識で自分の健康を守ってきたからだと感じています。本はライターを入れずにすべて自分で書いています。ライターを通すと言葉の温度が変わってしまうから、若い女医を主人公にした小説形式で若い内科医に伝えたいことを盛り込んだ「ドクターG(強い)の教訓」という本も書きました。今度は、自分自身が年齢を重ねる中で習得してきた健康法をテーマにした本を出版します。

 

Q:今後の展望をお聞かせください。

A:70歳が近づき、「いかに伝えるか」を強く意識するようになりました。便秘も不眠も、薬に頼る前に食事と生活習慣で改善できることが多い。しかしそれは教科書には載っていないのです。自分が動いてきたからこそ出会えた知識と人脈を、本という形で次世代に残していく。嘆くのではなく、経験を若い医師たちへ届ける活動を強化していきたいと思っています。

「正直に言う」医師が次世代へ贈る、
本物の健康と医療の知恵

次世代の皆さんには、「食べる・寝る・風呂に入る」という当たり前のことを大切にしてほしいと思います。一見すると当たり前すぎて軽んじられがちですが、この基本を整えるだけで、人はそう簡単には壊れません。心と体の土台を整えることこそが、どんな時代においても変わらない“強さ”につながるのだと感じています。

社会が複雑になり、情報や技術が溢れるほど、人は本来のリズムや感覚を見失いやすくなります。しかし、どれだけAIや医療技術が進歩したとしても、患者さん一人ひとりと向き合い、目を見て正直に伝えるという医療の本質は決して変わることはありません。

太陽クリニックは、そうした原点を大切にしながら、地域に根ざした本物の医療を提供し続けていきます。そしてこれからも、太陽のようにあたたかく、患者さんの笑顔を守りながら、地域を照らす存在であり続けたいと考えています。

「正直に言う」医師が次世代へ贈る、
本物の健康と医療の知恵