MIYAZAKI STORIES

三雲 尊允

祖父の魂を継ぎ、100年後の山を創る

Takamitsu Mikumo

三雲 尊允

合同会社伊藤木材植林 代表執行役員

https://ims-woodjob.my.canva.site

1994年1月7日生まれ、宮崎県出身 。2014年に有限会社伊藤木材石油に入社し、祖父のもとで修行を積む 。2017年に合同会社伊藤木材植林へ入社し、2022年より代表執行役員に就任 。伝統的な「架線集材」の技術継承と100%の造林を軸に、SNS発信や異業種コラボなど新しい林業の形を追求している 。

伝統技術「架線集材」と100%造林へのこだわり

Q:伊藤木材植林さんが手がけている事業内容と、現場でのこだわりについて詳しく教えてください。

A:私たちは宮崎県延岡市を拠点に、主にスギやヒノキ、雑木などの伐採から搬出、そして植林までを自社で一貫して行う「素材生産業」を営んでいます 。素材生産の現場では、山から木を運び出すために現在主流となっているのは重機が通るための作業道を細かく網の目のように山に抜いていく「車両系」のやり方です 。しかし、道を作ることは時に山の形を大きく変えてしまうことにも繋がります 。そこで私たちが最も得意とし、こだわり続けているのが「架線集材(かせんしゅうざい)」という、ワイヤーを張って空中で木を運び出す伝統的な技術です 。この方法であれば車両が入れないような急峻な地形でも山の地肌を傷つけることなく木を搬出することができます 。

3メートルや4メートルの原木を効率よく運び出し、日向や延岡、宮崎といった市場へと出荷しています 。また、伐採して終わりではなく、枝葉を片付ける「地拵え(じごしらえ)」を経て、100%の造林(植林)を行うことを徹底しています 。山主様からお預かりした大切な山を、次の世代がまた利用できる状態で確実にお返しする。それが林業に携わる私たちの、山に対する誠実さの証だと考えています 。

祖父から託された「誠実」という名のバトン

Q:林業の道に進まれたきっかけや、祖父・三雲氏から受け継いだ精神についてお聞かせください。

A:私の林業の原点は幼少期からずっと見てきた祖父の背中にあります 。祖父は「伊藤木材石油」という会社を経営しており私は幼い頃から、いわゆる「じいちゃん子」として育ちました 。学生時代を経て20歳の時に祖父の会社に入り修行を積みました 。そして23歳の時に自らの手で挑戦したいという「独立の意志」を伝えたところ祖父は私のために今の「合同会社伊藤木材植林」を設立してくれたのです 。祖父からは技術以上に、商売人としての「誠実さ」を厳しく教わりました 。特に印象に残っているのが「良いところは真似しろ、悪いところは真似するな」という言葉です 。他者の失敗を見て批判するのではなく、それを反面教師として自分の成長に繋げ、良いと思ったものは貪欲に取り入れていく。そうして自分なりに噛み砕いて学び続ける姿勢こそが会社を成長させる鍵だと言われました 。祖父が大切にしてきた「地域の方々との絆」を汚すことのないように地元宮崎の山を守る仕事を通じて地域に貢献できる喜びを噛み締めています 。私が今日こうして山にいられるのは祖父のおかげであり、いつか祖父を超え、胸を張って再会できるような「立派な山師」になることが私の生涯の目標です 。

「ありがとう」1万回がもたらす心の変革

Q:経営者として、また一人の人間として大切にされている「座右の銘」や習慣について教えてください。

A:私が日々欠かさず実践しているのは「ありがとう」という感謝の言葉を1日に1万回唱えることです 。これは尊敬する経営者の方から「人生が好転する」と教わったもので仕事中や移動中もカウンターを手に常に感謝を数え続けています 。最初は半信半疑でしたが、これを続けることで驚くほど自分の解釈力が変わりました 。例えば、山の現場でワイヤーが服に引っかかって作業が止まってしまうような場面があります 。以前ならイライラしていたかもしれませんが、今は「今ここで引っかかってくれたおかげで、もっと大きな怪我をする前に立ち止まることができた。ありがとう」と解釈できるようになるんです 。たとえ不運に見える出来事が起きても、それは自分に対する「修行」や「気づき」であり、感謝すべき対象へと変わります 。この「感謝の心」は社員とのコミュニケーションにも活きています。月に一度は社員と食事に行き、現場の声に耳を傾けながら、お互いに感謝を伝え合える関係性を築いています 。心身を鍛えるためにベンチプレスやトレーニングにも励んでいますが、強靭な肉体以上に、この折れない感謝の心こそが、困難な山の仕事を支える私の真の力となっています 。

 

Q:今後の展望や、宮崎の林業をどのように発展させていきたいと考えていますか?

A:これからの課題は、林業という仕事の魅力をいかに次世代に伝えていくかだと考えています 。現在、私たちの会社は20代からベテランまで計6名の少数精鋭で活動していますが、さらに人数を増やし、より多くの現場を回せる体制を作りたいと思っています 。そのために、これまでの林業のイメージを塗り替えるような取り組みにも着手しています。インフルエンサーとのコラボレーション企画や音楽イベントといった異業種との交流を通じて若者たちが「林業ってかっこいい」と思えるきっかけを作っています 。

将来的には地域の子供たちに向けた体験型イベントを開催し、私たちが守っている山がどうやって育ち、どうやって人々の暮らしを支えているのかを発信していきたいと考えています 。林業は、自分が植えた木が数十年、100年後の未来で誰かの家の柱や床となり、自分がこの世を去った後も価値を生み出し続ける壮大な仕事です 。この「100年後の山を創る」という誇りを胸に、新しい技術への挑戦を止めず、地域と共に成長し続ける会社を目指します。自然豊かな宮崎の山々を、より良い形で次世代へと引き継いでいくことが、私の最大の使命です 。

 

<若者へのメッセージ>

100年先の景色を創る仲間へ

林業は、自分がこの世を去った後も、植えた木が誰かの家の柱や床となり、100年先の未来まで生き続ける誇り高い仕事です 。現在は機械化も進み、技術革新によって誰もが挑戦しやすい環境へと進化しています 。郷土の山を守り、豊かな自然を次世代へ繋ぐバトンを私と共に受け取りませんか 。少しでも興味があれば、いつでも気軽に連絡をください 。共に未来の山を創りましょう 。

<若者へのメッセージ>